まとめ
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デジタル化の歴史と
教育分野への浸透

コンピュータと教育についてみてきました。申し上げるまでもなく、これらは、2023年時点での考察です。これから、私たちの社会が変化するにつれて、こうしたデバイスや漫画をはじめとするメディア様式との関わり合いかたにも変化が出てくることでしょう。子供の頃は,テレビや漫画は頭を悪くする、などと言われてPTAがにらみを効かせるといった時代を経ていましたが、教育で利活用するまでにはなかったと思います。私は、たまたま20世紀の終わり頃、パーソナルコンピュータの黎明期と学生時代が重なっていました。友人の下宿に行くと、友達が当時出たばかりのPCの雑誌を眺めながらET2001(Commodore社)も良いけど、これからはApple II(Apple社)だ!」などと息巻いていたことを覚えています。今の時代のように、アプリをダウンロードして使うこともできず、こうした雑誌の付録にあるプログラミングのソースコード(多くはBASICでした)をひたすら入力して、(うまくいけば)ゲームソフトを作って楽しんでいたものです。面倒なことではありましたが、そうした経験がプログラミングを覚えるきっかけにもなりました。その後、様々なパーソナルコンピュータが世に登場し、インターネットが身近なものとなり、メディアの価値観が変化しました が、スマートフォン(タブレットなど)の登場と共にPostPC時代が到来し、先のPCの雑誌などもあっという間に書店から姿を消し、さらには書店そのものが姿を消し始めました。
しかし、企業などはともかく、教育分野に、こうしたデジタル機材が関わり合うようになるのには間がありました。そこには、学習者と教師の関係が大きかったと感じています。学習者は日常的にスマホなどを使い始めましたが(最初はガラケーでした)、教師はそれまで自分や、先輩のスタイルを崩すことに恐れをいただきました。下手をすると、明日の授業に影響するかもしれず、じっくりと授業スタイルをデジタル化するほどの余裕がみられませんでした。基本的には、教科書と黒板があれば授業はできたからです。もちろん、先駆的な教師がいたこともありますが、教育が大きく様変わりすることはなく、ゆっくりとした変化でした。

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パンデミックがもたらした
教育の変化と未来への影響

そうした教育とコンピュータの世界がPostPC時代に(その言葉を知っているかどうかはともかく)享受し始めた矢先に起こったのが、COVID-19によるパンデミックです。2020年に始まり、ロックダウンも実施される中、導入されたのが遠隔授業でした。突然、教科書と黒板を使った授業ができなくなりました。それまでにあった、ネットワークやデジタルの中から教師たちが利用できるものがかき集められました。特に大学は、コンピュータを用いたe-LearningやLeraning Management System(LMS)などを導入しているところも少なからずありましたから、大慌てすることなく、教育の提供環境は準備できました。程なく、大学以外の教育機関にも、こうした仕組みが取り入れられました。授業を受ける学生たちは、PCやタブレットなどで受講することになりました。こうした授業ではスマートフォンも使われましたが、スクリーンサイズの小ささから、朝から晩まで授業を受けるには不向きでした。この時点で、大学や教育の価値観の変化に気がつき始めました。それまで、毎日大学に通い授業を受け、学期末などで定期試験を受けるという繰り返しや、授業後は友人らとサークル活動を行ったりバイトに勤しむなど、キャンパスライフという価値観を見直すきっかけになったのもパンデミックでした。むしろ、自立した学生などにとっては、オンデマンド型のストリーミング方式による授業の提供こそが、自分の生活スタイルに合っているとする意見もありました。長時間通学するよりも、効果的に学習することができるからです。空いた時間はアルバイトや資格取得などにも使えます。中には、仮想空間内などのミラーワールドで友人関係を築いたりするものも現れ始めました。こうした傾向は、SNSの時代から見え隠れしていましたが、パンデミックにより一気に推し進められました。
このように、パンデミックを経て多くの事柄や価値観が変化し始めました。こうした社会情勢の変化が、今後私たちの教育にも影響を与えるのでしょうか。それとも再び、黒板と教科書の時代に戻るのでしょうか。これからの未来にその答えが待っていると思います。
この研究活動を始めた2018年には想像もできなかった社会背景の変化がありました。2023年まで研究活動を延長し、ようやく出口を見ることができたように思います。

関連資料

本研究に関する発表については、以下を参照のこと。

  • 雑誌論文
    曽我 聡起、中原 敬広、布施 泉、川名 典人、自作デジタル教科書におけるVRビューサービスの利用に関する考察、日本デジタル教科書学会発表予稿集、https://doi.org/10.20755/jsdtpr.7.0_71、7巻、2018、pp.71-72
  • 西島 花音, 川名 典人, 布施 泉, 曽我 聡起、授業内容の漫画化が学習者のモチベーションに及ぼす効果の研究、日本デジタル教科書学会発表予稿集、https://doi.org/10.20755/jsdtpr.8.0_81、8巻、2019、pp.81-82
  • 伊藤優・曽我聡起、ビジュアル型言語からテキスト記述型言語への移行を意識したプログラミング教育支援教材の提案、日本デジタル教科書学会発表予稿集、https://doi.org/10.20755/jsdtpr.8.0_83、8巻、2019、pp.83-84
  • 西島 花音, 川名 典人, 布施 泉, 曽我 聡起、デジタル漫画教材における学生支援に関する構成要素の考察、日本デジタル教科書学会発表予稿集、https://doi.org/10.20755/jsdtpr.9.0_19、9巻、2020、pp.19-20

学会発表

  • 曽我聡起、中原敬広、川名典人、布施泉、中村泰之、「本当にインタラクティブなデジタル教科書」の改善と効果的な利用に関する実践報告、コンピュータ利用教育学会、2018
  • 曽我聡起、中原敬広、川名典人、オフライン型VRビューコンテンツを用いた 自作デジタル教科書の試作に関する報告、コンピュータ利用教育学会北海道支部、2018
  • 曽我聡起・西島花音・川名典人・布施泉、授業中作成する作業支援用デジタル漫画を用いた 講義およびデジタル教科書に関する検討、コンピュータ利用教育学会、2019
  • 西島花音・川名典人・布施 泉・曽我聡起、授業内容の漫画化が学習者のモチベーションに及ぼす効果の研究、日本デジタル教科書学会、2019
  • 西島花音・川名典人・布施泉・曽我聡起、三人称視点で作成する 授業内容に関する デジタル漫画教材に 関する研究、コンピュータ利用教育学会、2019
  • 伊藤優・曽我聡起、ビジュアル型言語からテキスト記述型言語への移行を意識したプログラミング教育支援教材の提案、日本デジタル教科書学会、2019
  • 西島花音・曽我聡起、教育教材と教育補助教材に関するデジタル漫画の構造的差異の考察、コンピュータ利用教育学会、2020
  • 曽我聡起、川名典人、拡張現実を利用した学習意欲を満足させる体験型学習に関する報告、PCカンファレンス北海道2021、2021 “Digital Natives, Digital Immigrants Part 1.” On the Horizon. Vol.9, no.5 (2001): 1-6.
  • Deci, Edward L., and Richard M. Ryan. Intrinsic Motivation and Self Determination in Human Behavior. New York: Plenum Press, 1985.
  • Gets, George L. “Student Participation in Instruction: Student Choice.” The Journal of Higher Education, 47, no, 3 (1976): 249-273

参考サイト等