みんなで作ろう! 支笏湖で会える「ゆるキャラ」ずかん
みんなで作ろう! 支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん
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ARで作るオリジナルキャラクター

みんなで作ろう! 支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん

支笏湖小学校での2度目の活動

2021年10月、北海道は少しだけコロナの感染が低くなっていました。この時期、私たちは千歳市立支笏湖小学校と支笏湖ビジターセンター(環境省)による、テクノロジーとサイエンスによる2度目の活動を実施しました。それが「みんなで作ろう!支笏湖で会える「ゆるキャラ」ずかん」(2021年10月5日実施)です。前年に実施した「支笏湖山線はかせになろう」の活動は、Rewiring Educationを参考にして、以下の事柄を意識しました。

  1. 学習体験のパーソナライズ化
  2. 学習者がデジタルネイティブであることを前提とする
  3. 学習者のモチベーションを上げる
  4. 学習空間を意識する
みんなで作ろう! 支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん

デジタルネイティブの児童に向けた
パーソナライズ化された
学習体験の構築

「学習体験のパーソナライズ化」は、今回も多様な学習者(この時は1年生から6年生)が対象となります。しかも、1年生を除く全員が前回の活動の経験者ですから、同じことはできません。「学習者がデジタルネイティブであることを前提とする」は、前回と同様です。今回の児童たちは2009年から2015年生まれです。「学習者のモチベーションを上げる」では、自己決定理論の3つの基本的欲求(自律性・有能感・関係性)を訴求することとし、特に「自律性」を重点目標としました。すなわち、この活動を通じて児童たちが自分の意思で決めてやっていることを認識できるようにすることで、モチベーションを長期的に持続できるように、と考えました。「学習空間の意識」とは、学習には、それぞれに適した空間があるという考え方です。今回の活動でいえば、個々の児童が支笏湖ビジターセンター内をiPadを持って写真を撮るなど情報収集を行う場があったり、集中して自分のキャラクタをデザインしたりする場があったり、自分たちが作成したキャラクタを大勢の人たちに披露して共有する場などです。

みんなで作ろう! 支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん

活動の流れ

大まかな活動の流れは以下のようになります(活動時間2時間ほど)。

  • 目的の動機づけを漫画で提示
    :前日
  • 支笏湖ビジターセンターの展示物を自由に見学・素材収集
    :iPadで素材を写真撮影など(一人一台のiPad)
  • ゆるキャラの絵を描く
    :紙
  • 好きな背景を選びAR動画を作成
    :「らくがきAR」アプリを使用
  • 作成したゆるキャラをスライドにまとめて発表
    :学支援にあたった学生や見学に参加した教育関係者、取材のメディアなどの前で

「支笏湖山線はかせになろう」は、学生が準備したデジタル教科書を児童たちが使い、支笏湖ビジターセンター内を歩きながら解答を探すといった中で、教材としてクイズやAR、VRなどのリッチコンテンツを利用したものでした。一方、「みんなで作ろう!支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん」では、児童たち自らがAR動画コンテンツを作成(iPadアプリ「らくがきAR」 を使用)し、その内容を発表するという活動です。ここでも、支援にあたる学生たちには、行き詰まった際のメンターとして振る舞うようにと言い伝え、児童たちが自由に活動することを優先させました。活動の前日には、この活動の目的として「身の回りの自然について楽しく学ぶ」ことをマンガ資料を配布することで児童らに伝えました。これも、多様な学習者(1年生から6年生)に意図を伝えるための工夫であり、リッチコンテンツの応用です。また、最後の発表では、1年生から6年生まで個々に異なる結果を披露しました。一般的には、学年ごとの成果になるのですが、今回はそれぞれの観点から多様な成果が披露されました。

前日に配布したマンガ資料

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実際に児童がつくった
「ゆるキャラ」

  • ひめますっちょ
  • シコツくん
  • ナンダヒメ
  • きみず
  • スジっちょん
  • ちっぷりーな
  • ヒメマスくん
  • いたちダブルヘビモモンガ
  • みずうみくん
  • 「いーぐるくん」と「そらとぶトカゲくん」

支笏湖マップでゆるキャラを見る

※支笏湖小学校エリアに「生態系」データのひとつとして登録されています。

みんなで作ろう! 支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん

『みんなで作ろう!
支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん』
の評価

デジタル教科書にARやVRなどのリッチコンテンツを盛り込んだ「みんなで作ろう!支笏湖であえる「ゆるキャラ」ずかん」の評価はどうだったのでしょう。活動修了後に寄せらせた感想から評価してみたいと思います。
まず、支笏湖小学校の先生らとは、活動を行う上で事前に何度か足を運び、内容について打ち合わせを行いました。その際は、小さな児童もいることから、iPadやデジタル教科書の操作などについて不安視する声もありました。先に述べたデジタルネイティブを見る目とも言えます。活動終了後は以下のような意見がありました。「積極的に取り組む姿が見られ、良かったと思います。」、「学生さん達の親切で粘り強い支援をいただき、参加した児童全員がキャラクターを作成することができました。ありがとうございます。ARアプリという普段使ったことのない教材を目にした児童は生き生きとしていて、「もっと作りたい!」という気持ちが前面に出ていたと思います。」、「ゲームのようで、新しい機能を大変楽しんでいました。」、「子ども達は、家でもPCやタブレットなどを使っているようですが、Youtubeで動画を見る、ゲームをするなどが主になっています。このようなアプリがあることを知らなかったようで、楽しみながらもうまくデジタル教材を使いこなせていたと思います。私自身も、このアプリのことを知らず、大変勉強になりました。」このように、概ねデジタルネイティブである児童らの振る舞いを再評価するような声が多かったと思います。

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児童の声

一方、児童らからは次のような声が寄せられました。

「ゆるキャラはいろいろなえを書くとうごいてまほうみたいでおもしろかったです。(略)さいごはたのしくできてしんぶんの字と絵がでてきておもしろかったです。」少し補うと、この児童の場合、私たちが想定したこととは異なることを行い、自分なりの発見をしています。今回は、自分で紙に描いたキャラクターをアプリでAR化することを考えていました。ところが、この子の場合、下映りを防止するために下敷きにしていた新聞紙がカメラ内に入っていました。この結果、新聞の中の文字がAR化されたのです。こうしたことを、当初の予定とは異なるから、と評価を下げるのではなく、こういうことも出来るとして評価することが学習のパーソナライズだと考えます。ひょっとすると、この児童はもっと異なるアプリの使い方を導き出してくれる可能性を示してくれたと思います。

「イーグルくんとそらとぶトカゲくんをだいがくせいの人とつくれてよかったです。」、「…書いたのが動いてたのしかったです。」
このように、「楽しかった」と評価する声は多かったです。私たちが想定した「まずは楽しむ」という目的は達成できたと考えます。

「…今日「ゆるキャラ」を作って楽しかったです。何が楽しかったかというと、タブレットをつかって、写真をとったこと、タブレットの中で自分の「ゆるキャラ」の「ナンダヒメ」が動いたこと、つくった「ゆるキャラ」をみんなの前で発表できたことです。みんなの発表を見たら、すごくうまかったです。」
この評価では、人の前で発表できたことについて自分はもちろんですが、他人の評価も行なっています。自己決定理論の3つの基本的欲求のうち有能感、関係性を満たしています。

「ゆるキャラをつくってとてもたのしかったです。またゆるキャラをつくってともだちのおとうさんおかあさんにみてもらいたいです。」
こちらも、同様に関係性を意識していることがわかります。

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まとめ

このように、今回の試みは自己決定理論の内発的モチベーションの全ての基本的欲求に訴求していることが伺えます。Rewiring Educationが示す「学習に関するリサーチと最新テクノロジーを活用して、学習者一人ひとりのニーズに即して学習体験をパーソナライズ化する」ことが実現可能であることを示したと言えます。この取り組みはNHKのローカル放送でも取り上げられたのですが、いみじくも、アナウンサーの一人が「(自分たちがARアニメを作ることで)こうした取り組みを行ったことは記憶に残るはずですね」と評価していました。内発的モチベーションが上がったとすれば、将来に渡りこのモチベーションが持続されることが期待され、将来的な学習や活動に活かされると思います。

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XR:ARを用いた教育

いわゆるARアプリが世に広まりつつあります。この分野のアプリとしては、古くからあり、有名なものはゲームアプリである「ポケモンGo」かもしれません。また、家具メーカーのIKEAなども比較的古くからAR機能を実装しています。これは、通信販売のメーカとして、購入した製品がサイズの問題で部屋に配置できないなどのトラブルを未然に防ぐという効果を期待してのことだと言われています。同じような目的で、AmazonのアプリもAR機能を実装しています。
また、Googleアプリでは、限られたものではありますが、検索結果を実寸のAR(動作付き)で表示する機能を実装しています。確認したものとしては、パンダやチワワ、チータなどの動物や魚類の一部などがあります。
これらは、実寸で普段見慣れた環境に表示することで、そのサイズを認識することができます。私たちが「支笏湖山線はかせになろう」で提示した蒸気機関車なども実物大で表示して、様々な角度から観察することができました。もちろん、図版と異なり、動き方や細部を確認することも可能です。ARのこうした特質は、教育教材などにとって、うってつけであることは直感的にわかります。

同じように、サイズを測る機能を活かした計測アプリなどもあります。これらは、少々離れた位置からも計測が可能であることから、例えば大雪の際にカーポート上の積雪を計測するなど危険な場所でも実測することができますが、条件によっては誤差が大きいので、概略を認識する程度に用いるのが良いかもしれません。
他には、山の名前や方角を示したり(百名山コンパス )、人工衛星や航空機の軌道を示したり(SpaceStation-AR 、FlightRadar24 )、上空の雲から降雨量をARで示す(アメミル )などのアプリケーションがリリースされています。
これらは、目標方向を定める際や、目視した航空機や雨雲、山などに関する情報を得るなど(FlightRadar24)、いわば観測者の目視機能を拡張する機能としてARを利用していることになります。上手く活用すると、授業の強力な補助手段として利用することができるかもしれません。
また、実際に授業での利用を想定したARアプリもリリースされています。もっとも有名なアプリの一つが、Froggi-pedia でしょう。このアプリは、カエルの生態に関する学習アプリですが、ARを用いてカエルを解剖することも可能です。近年、都会では理科の解剖に使うカエルを揃えることが困難な地域もあるようです。また、実際のカエルの解剖が苦手な学習者にとっても、手軽に扱えるアプリとして利用が可能です。他にも、数学の空間図形などを扱うことができるGeoGebra空間図形 などのアプリもあります。

文部科学省もこうしたAR機能の有効性について、学校における先端技術活用ガイドブック で次のように言及しています。すなわち、期待される分野としては

  • 空間をより具体的に認識できる
  • 考えの深まりや表現の広がりに寄与する

として具体的には、

  • 現実感をもった体験をすることができる
  • 積極的に学習に取り組みやすくなる

と述べています。これにより、「現実感をもった体験をすることができ」たり、「積極的に学習に取り組みやすくなる」と考えているのです。確かに、上述したAR体験などは、こうした期待に応えることができそうです。私たちが取り組んだ「支笏湖山線はかせになろう」の取り組みでAR教材を交えたことで、多様な学習者に対して、持続するモチベーションを提供できた可能性を実感することができました。

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VRを用いた教育

一方、VRに関しても様々なアプリがあります。教育関係においても、英語学習アプリのほか、オンライン会議向けなどがあります。ただし、こうしたアプリにおいては、基本的にはVRゴーグルを用いることが多く、その扱いそのものが敷居を上げることになります。工場や機械操作などのトレーニングやサポート、ゲームやeスポーツなどの分野では、既になくてはならないものかもしれませんが、教育現場での利用は現状では限定的です。

VRの課題としては、

  • コンテンツ作成のコスト(時間)
  • 機材取り回しとその準備(VRゴーグル)
  • ゴーグルの重量による体への負担

などを挙げることができそうです。

ただし、タブレット端末を用いて360度のパノラマ画像を提示することで、水中の様子などを体験させることなどは可能であり、可能性を持っていると言えそうです。
以上、見てきたように、当面は汎用タブレットによるコンテンツの一つとしてARを使用するのが妥当であり、授業の全てをARで行おうとせず、ARで内発的モチベーションを上げることによる学習の動機づけに用いることなどが、効果的で現実的な利用であると考えます。いずれは、技術の進歩により、学習者に負担をかけずに利用できるARグラスやゴーグルなどが安価に提供される様になるかもしれません。

ギャラリー

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