コロナが変えた日本の教育
コロナが変えた日本の教育
コロナが変えた日本の教育
コロナが変えた日本の教育
コロナが変えた日本の教育

コロナが変えた日本の教育

コロナが変えた日本の教育

COVID-19による教育への影響と秋入学への議論

COVID-19による教育への影響は、2020年4月7日に政府が発出した「政府緊急事態」により、急遽、日本各地で対応が迫られました。これを受けて、北海道・札幌市は共同緊急宣言を行い、小中高が臨時休校になりました(2020年4月12日)。日本では、新学期が始まるタイミングであり、様々な対応が講じられる中、秋入学への移行なども議論されるに至りました。当時、私も9月入学に賛成でした。大学としては、世界的に秋入学を採用する国が多く、留学生対応などを考えると、これが最後の好機と思えたからです。中には、企業などによる就職対応などに配慮すると、秋学期入学は困難との意見もありましたが、その後、日本ではジョブ型雇用が広まり、グローバル人材の雇用を推し進めるなど、一斉入社型から雇用形態が変化を始めました。その意味では、2020年以降秋学期入学に移行する価値はあったかもしれませんが、実は、2020年10月前後の札幌市の感染者状況は、10名前後と数は少なかったものの、その後11月になり、3桁に上昇しました。仮に秋学期入学を進めても、学校で児童生徒らの感染者数が増大した可能性はあり、実施したとしても、感染対策という意味は無かった可能性があります。

コロナが変えた日本の教育

オンデマンド授業の導入と
教育格差の問題

COVID-19による教育への影響は、2020年4月7日に政府が発出した「政府緊急事態」により、急遽、日本各地で対応が迫られました。これを受けて、北海道・札幌市は共同緊急宣言を行い、小中高が臨時休校になりました(2020年4月12日)。日本では、新学期が始まるタイミングであり、様々な対応が講じられる中、秋入学への移行なども議論されるに至りました。当時、私も9月入学に賛成でした。大学としては、世界的に秋入学を採用する国が多く、留学生対応などを考えると、これが最後の好機と思えたからです。中には、企業などによる就職対応などに配慮すると、秋学期入学は困難との意見もありましたが、その後、日本ではジョブ型雇用が広まり、グローバル人材の雇用を推し進めるなど、一斉入社型から雇用形態が変化を始めました。その意味では、2020年以降秋学期入学に移行する価値はあったかもしれませんが、実は、2020年10月前後の札幌市の感染者状況は、10名前後と数は少なかったものの、その後11月になり、3桁に上昇しました。仮に秋学期入学を進めても、学校で児童生徒らの感染者数が増大した可能性はあり、実施したとしても、感染対策という意味は無かった可能性があります。
我々は、コロナ禍で新学期を迎えるにあたり、主に講義系科目を中心に、3月の段階で収録配信型であるオンデマンド授業の準備を行い始めました。これは、課題提出や資料の配布などにおいて、LMSとの連動が必要で、以前よりこうした講義支援システムを利用していた大学においては、導入しやすい状況にはあったと言えます。逆に、こうしたシステムを持たない小中高などでは、厳しい対応となりました。また、e-Learningなども同様で、パンデミック禍において、課題の提出と評価を行う上でこれらのシステムが果たした役割は大きかったと言えます。
ただし、実際には、それまでの授業をそのままオンデマンド型にするだけでは、学生がモニターの前で寝てしまうことは容易に想像できました。まずは、可能な限りの授業サービスの提供を実現すべく、準備を行いました。

コロナが変えた日本の教育

オンデマンド授業の実施における
課題と工夫

第1ステップでは、オンライン会議システムのZoomやBigBlueButtonを用いて授業内容を収録し、配信しました。
授業で使うスライドはAppleのKeynoteを使い、iPadで再生することにより、必要な箇所をApple Pencilで学習者に提示することができました。大学においては、数年前からPowerPointなどのスライドを用いることが一般的でしたので、これもスムーズに移行できたと思います。こうした作業に慣れると、第2ステップに移りました。この段階では、録画動画ではなるべく教師の顔を出すことを心がけました。これは、教師のモチベーションを学習者に伝えるための工夫です。授業動画では、画面の向こうにいる学習者を想像しながら、笑顔や語りがけすることを心がけました。第3ステップでは、グループ学習などにおいても、ライブストリーミングで授業を行いました。特に、私たちはビッグデータを用いた授業などにも挑戦しました。これには、TA/SAと呼ばれる学生たちによる支援体制が取れたことも有効に機能しました。
こうしたオンラインによる授業の実施により、なんとかパンデミックにおける教育を維持してきた私たちですが、日本においては、LMSやe-Learning、インターネットの普及など、様々な環境が整っていたことが幸いでした。とはいえ、朝から夕方までオンライン授業を受ける学生たちは大変でした。また、教師も1対多の状況でメール対応が強いられるなど、苦心を強いられる場面もありました。

コロナが変えた日本の教育

コロナ禍における教育の変革と
テクノロジーの活用

結局、一番苦労したのが英語など語学系科目などの定期試験対策などです。試験問題の関係などから、一度に多数の学生を受験させるなどの方式がCOVID-19対応として向かないことは明らかでした。また、実習系科目なども対応に苦慮した科目ですが、一部の大学では、PCにおけるシミュレータやVRなどを用いるなど、これをきっかけにDX化に挑戦する大学が出てきました。
“Simple and Usable”(Giles Colborne, 2010) という書籍の中でThe change curveという考え方が示されています。例えばテクノロジーなどで、何も改善をせずに陳腐化すると、次第にパフォーマンスが落ちてきます。そこで、新たなテクノロジーを用いることで改善を図ろうとするのですが、そこには必ず痛みが伴います。移行期においては、思った以上に、従来のパフォーマンスに到達しないからです。中には、諦めて元の方法に戻すこともあります。ところが、今回のパンデミックのように、どうしても乗り切らなければならないとなると、人は痛みに耐えて乗り越えます。14世紀のペストの流行後にルネッサンスが勃興するなどは、The change curveを描けた例なのかもしれません。
コロナの直前に、テクノロジーと学習の融合を謳った“Rewiring Education”(John Couch, 2019) という書籍が出版されました。そこには、「痛みを乗り越え、新たな手法を検討する」とありました。結果的に私たちの取り組みは、この書籍に示された様々なテクノロジーと教育手法について検証することになりました。

コロナが変えた日本の教育

オンライン教育における
双方向性と問題解決型教育の重要性

特に、この書籍で引用しているジョン・デューイの「学習は、子供自身が参加して双方向のやりとりを通じて学ぶのがベストであり、子供が実際に何かを「する」ことが大切」とする提言にあるように「双方向」はオンライン授業にとって重要な事柄です。如何にして、教師と学習者が双方向にやり取りをするのか、そのために使えるテクノロジーはあるのか、などを常に工夫し、検討する必要があります。デューイはその教育論として、人間の自発的な成長を促すための環境を整えるのが教育の役割であると、問題解決的学習について提言しています。これは、現代社会と日本の教育が求めるSTEAM教育(科学、技術、工学、芸術・リベラルアーツ、数学の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念)が目指すゴールの一つであり、文部科学省の資料中にもGIGAスクール構想について記した資料の中で、「課題解決型教育」として紹介されているものです。彼が「価値」について、それを気まぐれな機能とか純粋に社会的に構築された機能とも考えずに、出来事に組み込まれた質と考えた」ことは、価値の変容が次々と起こっているコロナ禍において考えるべきことかもしれません。これは、教育の価値についても当てはまります。

関連資料

  • Appleのデジタル教育、かんき出版(“Rewiring Education”, John Couch, 2019)
  • 住宅・建築SDGsフォーラム(旧グリーン建築フォーラム)
  • Simple and Usable: Web, Mobile, and Interaction Design (Voices That Matter) , Giles Colborne, New Riders Pub 1st edition (September 26, 2010)
  • Rewiring Education: How Technology Can Unlock Every Student’s Potential, John Couch, Jason Towne, Steve Wozniak,BenBella Books (March 8, 2018)